教員採用試験の中でも「集団討論」は、多くの受験者にとって不安の種となる試験科目です。
特に講師経験がない状態で試験を受ける際は、経験値からの意見を語ることはほぼできません。
しかし、経験値の差がある講師の先生方と同席する可能性があるからこそ、しっかりと準備をすれば経験値の差をひっくり返すことができるのもこの集団討論です。
そこで本記事では、以下についてまとめました!
- 集団討論で何を見極められているのかの位置付けと重要性
- 集団討論を突破するためのコツ
- 実際に出題されたテーマ例と議論の切り口
集団討論で何がわかるの?教員採用試験における位置づけと重要性
そもそも討論とは何なんでしょうか?
教育現場では、教員同士の連携や保護者・地域との協働が欠かせません。
試験官は討論の進行を見守りながら、参加者のコミュニケーション能力、論理的思考力、協調性、リーダーシップなどを多面的に評価します。

集団討論の中で以下のようなポイントを押さえているかどうか観察し、実際に働いてからの姿を想像できるかどうか判断します。
- 1つの問題や事象について広い視野と考えを持つこと
- わかりやすく意見を述べること
- 相手の考えをしっかりと聞き、建設的な議論をすること
話し合いでしょ?テーマ次第だしなんとかなるでしょ!と侮るなかれ。
集団討論ができないと以下のような評価がなされてしまう可能性があります。
試験中に焦ってしまい、自分の意見を長々と話してしまった
→働いてからも焦ったら長々と一方的に意見をおしつけるの?
論点がまとまっておらず話がわかりにくい
→授業や連絡で伝えたいことを伝えられないんじゃないの?
意見を言わず何を考えているかわからない
→信念を持って子どもたちと接することができるの?
個人面接や模擬授業・筆記試験では見ることのできない「人との議論」だからこそ適性を見るポイントは存在しているのです。
討論の中で、そうした現場力を試す意味でも、集団討論を試験に導入している自治体は多いです。
そこで失敗しないための「コツ」をしっかりと捉えて練習しましょう!
討論の場でスムーズに考えを言語化しコミュニケーションをするために以下の記事も参考にして見てください!
現役合格者が語る!集団討論を突破するための「コツ」
集団討論は自分だけで行うものではないからこそ、対策やコツも他の試験とは異なります。
5つコツを紹介します。後半になるほど難しく・練習が必要になるためしっかりと準備しておきましょう!
- 過去のテーマを研究しておくこと
- 自分に合った発言のタイミングと質を理解する
- 複数の視点で1つの事象を考える
- 傾聴力とリアクションで最低限の協調性をアピールする
- 話の転換を恐れず逸れたら軌道修正を行う
過去テーマを研究する
過去の出題テーマを分析し、教育に関わる幅広い知識をインプットしておきましょう
議論のテーマが発表されたときに、そもそも自分が知らない分野で意見を持つこともできなければ議論以前の問題となってしまいます。
そして討論では
人からどんな意見が出るのか
が重要になります。
そこで、友人や予備校の仲間と模擬討論を重ねて、実践感覚を磨くことも重要です。
「1つのテーマに対して人がどんな意見を持つのか」
「自分はどういう意見を主張すれば説得力を持って語ることができるのか」
この辺りは個人で対策をしているだけでは難しいポイントとなります。
周囲の人に協力してもらい多角的な意見を知ることから始めましょう!
発言のタイミングと質を見極める
自分がどこでバリューを出すのが得意なのかを把握しておきましょう。
例えば
真っ直ぐ芯をくった意見を言うのが得意
→最初に発言して説得力と積極性をアピールする
他の人の意見を広げることが得意
→2,3人が発言してから補足で追加の視点を足して視野の広さをアピールする
議論の方向性を修正することが得意
→一通り意見を聞いた後に議論の方向性を定めたり軌道修正し、問題解決能力をアピールする
様々な対策サイトや本で
・最初に発言した方がいい
・司会は積極性を示せるのでやった方がいい
などさまざまな記述があります。
この情報を間に受けてわざわざ自分の苦手なフィールドに進んでは元も子もありません!
小手先のテクニックを取り入れることはやめて、自分はどういう意見の出し方が得意なのかしっかり見極めていきましょう。
4つの視点を持っておく
普段から教育のトピックについて考えるときには複数の視点を持つようにしましょう!
集団討論で困るのが
周囲の人に自分の意見を先に言われてしまった
という時です。
1つのテーマに関して1つの意見しか持てないとこう言った状況に陥る可能性は高くなります。
そうならないためにも、以下の4つの視点で考える癖をつけてください。

- 教員としてすべきこと
- 生徒がどういう実態・状態になっているか
- 保護者として学校に求めていることは何か
- 地域・関係者が学校に求めていることは何か
例えば「若者のスマホ依存について」というテーマであれば
- 授業中の使用制限やスマホトラブルの啓発活動の他にも保護者の方に協力を求める施策が必要になる
- 依存したくなくても友人関係やコミュニケーションには必須のツールになっている
- 自分の家庭のルールが適切かわからないため他の家庭の実態を知りたい
- 歩きスマホや電車・公共のマナーを最低限身につけさせてほしい
このようにそれぞれの視点での現状やすべきこと・求めていることを考えておきましょう。

実際に働いていく中で、教員・生徒間だけで問題を解決することが難しいシチュエーションもあります
保護者の方に協力を仰いだり、地域の方の声を取り入れることも重要で、尚且つ採用試験段階でそこまで広い視野を持って状況を判断できていることはかなり大きな強みになります。
傾聴力とリアクションを大切にする
集団討論特有の大切なポイントの1つが傾聴力やリアクションです。
この傾聴力やリアクションは
個人面接や模擬授業・筆記試験では見ることができないポイント
であるため特に見られていることが多いです。
まずは相手の話を「目を見て聞く」「頷く」「共感を示す」というリアクションを取って、最低限の協調性があることをアピールしましょう。
それができれば次の段階として、相手の発言を広げたり、引き出すことに挑戦してください。
例えば、以下のようなキーワードを使って討論を進めてみましょう!
- Aさんが先ほどおっしゃっていた考えに近いのですが、〜〜
- Bさんの意見を聞いて感じましたが、〜〜
- Cさんの意見には私は反対で、〜〜
- Dさんの〇〇という意見に付け加えたい視点があって、〜〜
上記のように人の話を聞いた上で、自分の意見を述べるという工夫をすることで相手の意見を聞いていることをアピールできます。
こうすることで人の発言を大切にできる人だという印象を与えることができます。
特に学校では生徒の意見や発言にしっかりと耳を傾ける必要があり、それが可能であることをしっかりとアピールしましょう。
流れが逸れたと感じた時は怖がらず絶対に軌道修正を行う
集団討論は自分だけで作るものではありません。
実際にあった1つの例を紹介します(後ほど紹介する討論の切り口でも取り上げます)。
テーマ「保護者が子どもを塾に通わせたいと言ってきた。学校としてどう対応すべきか」
討論前半で以下のような意見(要約)が出ていました。
保護者の方が塾に通わせたいと思っている理由の部分をヒアリングすべき
学校の学習だけでは足りないと感じている可能性があるため授業の質を向上させる必要性がある
受験を考えたら学校の授業だけでは不足していると感じる保護者も多いのではと思う
子どもの成績に保護者が不安を持っているのでは?
学校がどうのような学習内容をしているか保護者にも共有すべき
塾に通わせることができない家庭もある中で学校として通塾を進めて良いのでしょうか?
ここまで進んだ中で大きな問題点があることに気付けますか?
主語が保護者・学校で生徒の意見や意思が何もない
ということです。大切にされるべき生徒の考えが一度も話に出てきていないのです。
ここで生徒の考えに議論を促す必要があると言えます。流れの変え方は様々なので具体的な解答例を載せておきます。
⚪︎さんの意見を聞いて感じたのですが、私個人としては最初に生徒自身に、「塾に通いたいと考えているのか」「保護者の方とどんな会話があったのか」を確認するべきだと考えています。仮に生徒が現状の宿題や学習でいっぱいいっぱいなのであれば通塾は余計な負担となり得る可能性もあるので、生徒へのヒアリングが必要なのではないでしょうか?
会話の流れを大きく変えることは、勇気が必要となります。しかし方向性を修正することで保護者の方の視点に偏っていた討論が、生徒のことも考えた討論になり、とても良い討論となった実感がありました。
現役大学生のうちだからこそ、経験よりも理想論で俯瞰して議論を考えることができると思います。



このままではまずいなと感じた時は勇気を出して軌道修正のための発言をしていきましょう!
具体的な討論テーマと討論の切り口
ここからは以下のテーマ例を3つ使用し、背景や方向性・切り口について記述していきます!
- 若者のスマホ依存、学校としての対策は?
- 保護者が子どもを塾に通わせたいと言ってきた。学校としてどう対応すべきか?
- いじめ問題、地域と連携してどう防ぐ?



続きを読む前に一度自分ならどんな切り口で討論するか考えて見ましょう!
テーマA:「若者のスマホ依存、学校としての対策は?」
- 背景:スマホ利用の低年齢化、依存傾向の強まり
- 課題:学習や生活習慣への影響、SNSトラブル
- 対応策:使用ルールの明確化、保護者との連携、ICTリテラシー教育の強化
- 結論:禁止ではなく教育と対話を通じて健全利用を促すべき
近年問題になっているスマホ依存についてですが、おそらく結論は上記に記したように禁止ではなく健全利用の方向に自然と進んでいくかと思います。
スマホを使うことに懐疑的もしくは否定的な意見が多めに出る傾向にあるため、そんな時は必要性やメリットの部分にも焦点を当てると議論が停滞しづらくなるためスマホの利用に対して肯定・否定どちらの意見も考えておきましょう!
議論の切り口の例
- 現代を生きる高校生たちのスマホを禁止するのは現実的ではない
- スマホが時に重要なコミュニケーションツールにもなり得る
- 将来的にスマホなしで生きていくことは考え辛い
- 学校で教えるべき正しい・最適な使い方とは何か
- 対面コミュニケーションとスマホのコミュニケーションでの違いを認識するためにできる工夫
- SNSや生成AIの良い使い方と情報の扱い方について
- まず教員が適切なスマホの使い方を知ることの必要性
- 依存する原因と依存を防ぐ具体的なアクションプランについて
- 生徒がスマホに夢中になっている時の保護者・地域からの見え方について
テーマB:「保護者が子どもを塾に通わせたいと言ってきた。学校としてどう対応すべきか」
- 背景:学力向上を望む保護者のニーズ、学校教育への信頼の揺らぎ
- 課題:学校と塾の役割の混同、教員へのプレッシャー
- 対応策:個別面談による保護者理解の促進、学校の取り組みの情報発信、補習や支援の工夫
- 結論:子どもの最善の利益を第一に考え、家庭との連携を強化する
前述した通り「保護者が」という文言がある場合議論は自然と保護者と学校の視点に向かっていきます。
この視点を忘れず、生徒ファーストで議論が進んでいくように注意しておきましょう!
議論の切り口の例
- 塾に通わせたいという背景にある理由
- 生徒が自分ではどう思っているのかを確認する
- 塾に通わせることができる家庭とできない家庭がある
- 学校として通塾を勧めることのメリット・デメリット
- そもそも通塾が不要なように習熟度を上げる授業の工夫が必要
- 塾に通わせる目的が授業理解の視点なのか受験・進学の視点なのかどうか
- そもそも塾は学習塾なのかどうか
- 保護者が学校の学習では不十分だと感じる理由
- 通塾することによる子ども達の負担や部活動への影響
テーマC:「いじめ問題、地域と連携してどう防ぐ?」
- 背景:いじめが学校内外に及ぶケースの増加
- 課題:早期発見の難しさ、教員の対応限界
- 対応策:地域ネットワークの構築、スクールカウンセラーとの連携、SNS相談窓口の設置
- 結論:地域社会と一体となった包括的な対応が必要
ネットいじめなどにも代表されるように近年いじめ問題はますます複雑化しています。
早期発見・対応のためには学校だけでは難しくなりつつあるのも事実です。ここで求められるのは「絶対にいじめはしてはいけない・させてはいけないこと」という視点を持ちつつ、実際にどう対応すれば良いのかをバランスよく考えられることです。
議論の切り口の例
- 実際にどんな手法でいじめが行われる可能性があるのか
- 学校外で発見の手掛かりとなる要素はなんなのか
- すでにある相談窓口などの存在をまず教員が把握しているのかどうか
- 子ども達が助けてと言いやすい環境作りについて
- SNSでのコミュニケーションをどう扱っていくのが良いか
- 地域の方に見て見ぬふりをせず伝えてもらうためにできる工夫
- ネットでの加害者・被害者の距離の取り方
- ネット上のコミュニケーションについて教員-生徒間での認識の齟齬について
- 保護者のコミュニケーションの取り方について
合わせてテーマとなりそうな内容について以下の記事も書いているので興味があれば参照してください
まとめ:複数の視点を持って採用試験の討論に勝利しよう
教員採用試験における集団討論は、しっかり準備すれば自信を持って臨める科目です。現役合格者の多くは、早い段階から練習と情報収集を始めています。
明日から実行できるポイント:
- 過去問や討論テーマをストックしておく
- 複数の視点(特に保護者・地域)を自分に持つようにする
- 定期的な模擬練習を仲間と開始する
- 教育ニュースに日頃から目を通し自分の意見を持つ
集団討論は「一人で話す力」だけではなく、「討論を創る力」が試されます。



周囲と協力しながら、自分の強みを活かして、合格をつかみ取りましょう。
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