転職活動において、面接で必ずと言っていいほど聞かれるのが「退職(転職)理由」です。実際、転職理由の伝え方一つで採用結果が大きく左右されることは珍しくありません。
企業側が転職理由を重視する理由は、応募者が将来的に長く働く可能性があるか、仕事に対してどのような姿勢を持っているかを確認したいからです。
一方で、転職をする側からすると
「そんなにいい理由で退職をしていないんだよな・・・」
という人も多いかと思います。
そこで本記事では以下のようなことをまとめていきます。
- 採用担当者が嫌う転職理由
- 好印象を与える転職理由
- ネガティブな退職理由を前向きに変換する具体的な解答例
もしも自分が何をしたいのかわからない。など自己分析ができていない場合は先にこちらの記事からご一読ください!
採用担当者が嫌う転職理由とその回避法
転職活動における面接で必ずといっていいほど聞かれるのが、「なぜ前職を辞めたのですか?」という質問です。
企業の採用担当者にとって、この問いは応募者の価値観や人間性、将来的な定着性を見極めるための重要なポイントとなっています。そのため、この質問にどう答えるかによって、面接の評価が大きく左右されることも珍しくありません。
しかし、ここでやってはいけないのがこちらです。
「ネガティブな転職理由」をストレートに伝えてしまう
例えば、以下のような理由です。
「上司と合わなかった」
「社内の人間関係が悪かった」
「給与が低すぎた」
「残業が多くて疲弊した」
「評価制度が不透明だった」
「希望していた業務に携われなかった」
事実としてはもっともであっても、こうした理由をそのまま口に出してしまうと、面接官にとっては警戒すべき要素として受け取られてしまう可能性があります。

採用担当者が転職理由としてこうしたネガティブな表現を嫌うのには、いくつかの理由があります。
- 問題が起きた時に人のせいにする傾向があると思われる
- 社外に対して内情のネガティブな部分を話してしまう人だと思われる
- 前向きなビジョンが見えず貢献してくれる未来が見えなくなる
問題が起きた時人のせいにする傾向があると思われる
ネガティブな理由が嫌われる理由の1つ目は「この人は問題が起きたときに、それを周囲のせいにする傾向があるのではないか?」という疑念を抱かせてしまう点です。
もちろんないに越したことはありませんが、会社やチームの中で環境が合わない可能性もあります。
面接時点で環境が合わなくなって辞めたということをそのままストレートに伝えた場合、採用後仮に合わない環境になってしまったときに、また短時間で退職してしまうのではないかという不安を面接する側は感じてしまいます。
例え自分の本心として周りの環境が悪かったという思いがあったとしても面接の場では、自己成長や自分の責任にも焦点を当て他責だけの理由にならないように意識しましょう。
社外に対して内情のネガティブな部分を話してしまう人だと思われる
前職に対するネガティブな内情を口にする応募者は、「社外に対しても内情を軽々しく話してしまう人」「守秘義務への意識が低い人」とも受け取られかねません。
たとえその意図がなかったとしても、前職の具体的なトラブルを詳細に語ったり、会社名を出して批判したりすることは、企業イメージや信頼性の面からも好ましくないと判断されてしまうことがあります。
必ずしもイコールにはならないかもしれませんが
面接の場で詳細なトラブルを語る = プライベートや公の場でも詳細なトラブルを口外する
と思われかねません。
転職理由以外の場面でも、質問によってはマイナスな要素を話す場面もがあるかもしれません。
その場合は具体性を持たせるのではなく、概要や最低限必要な状況のみを語り、詳細な情報を制限しながら上手に伝えるよう意識しましょう。
前向きなビジョンが見えず貢献してくれる未来が見えなくなる
ネガティブな理由だけを話してしまうと、「この人は次に何を求めているのか」「今後どんなキャリアを築いていきたいのか」といった前向きなビジョンが見えづらくなります。
退職理由・転職理由を聞かれている時に採用担当者が本当に知りたいのは、「なぜ辞めたのか」だけでなく、「次は何を実現したいのか」という“未来”の部分です。
ネガティブな出来事を転職理由として話すだけで終わってしまうと、前向きな意欲や将来的なキャリアプランが見ません。
そうすると頑張ろうという意欲のような前向きな意志を感じられず、「この人を採用しても企業に貢献してくれるイメージが湧かない」と思われてしまいかねません。
自分の成長や今度の展望を伝えて前向きな見通しを伝える
上記にマイナスに思われる理由を書きましたが、全てのネガティブな理由が絶対にNGというわけではありません。
大切なのは、たとえ転職のきっかけがネガティブなことであっても、それをどのように自分の成長や今後の展望に結びつけて話せるかという点にあります。
例えば、「給与が低かったから辞めた」という話も、「自分の成果に対して正当な評価がされる環境で、より高い目標にチャレンジしたいと考えるようになった」というふうに言い換えることで、前向きなキャリア志向の表現へと変換することが可能です。
また、「人間関係が悪かった」という話も、「多様な価値観を尊重しながらチームで成果を出せる職場に身を置くことで、自分自身の対人スキルもさらに伸ばしていきたい」といったように、自身の課題意識とそれに基づいた前向きな挑戦として表現することで、同じ内容でもまったく異なる印象を与えることができます。

つまり、ただ事実を説明するのではなく、相手がどう受け取るかを常に意識するようにしましょう。
過去に起きた出来事をどう説明するかは、自分のコミュニケーション能力や価値観、さらにはストレス耐性や人間関係への姿勢まで反映されるものです。採用担当者は、応募者の話し方や表現の端々から、そういった内面を読み取ろうとしています。
したがって、ネガティブな転職理由を語る際には、まず事実を一歩引いた目線で客観的に整理し、それをどのように伝えれば「前向きな挑戦」に聞こえるのかを考えるようにしましょう。
面接で好印象を与える転職理由の伝え方
転職理由を好印象に伝えるためには、まずネガティブな側面ではなく、ポジティブな表現で自分の意欲や目的を明確に伝えることが効果的です。
転職に伴う動機が前向きであることを示すことで、採用担当者に積極性や主体性を印象付けることができます
具体的には
「新しい挑戦を通してキャリアを広げたい」
「専門性をさらに深めたい」
「自分の力をより発揮できる環境で働きたい」
など、前向きで具体的な動機を述べることが好まれます。
前向きに伝えるためのポイントとして以下のいくつかのポイントから1つを選んで意識してみてください!
- 転職理由にストーリー性を持たせる
- 具体的なエピソードで経験や考え方を鮮明に描写する
- 志望動機や自己PRとの一貫性を持たせる
- 将来的なビジョンを伝える
面接全体へのマインドの持ち方はこちらの記事をご一読ください!
転職理由にストーリー性を持たせる
転職理由を伝える際にストーリー性を持たせることあh非常に重要です。
ストーリー性とは、転職を決意した背景や理由について、順序立てて相手が理解しやすいように説明するということです。
具体的には、まず以下のような手順です。
- 現職(あるいは前職)で自分がどのような業務に携わっていたのかを簡潔に伝える
- その中で感じた課題や限界を客観的かつ冷静に説明する
- その課題を克服し、さらに成長するために何を求めているかを整理する
- 次の職場でどのようなことを実現したいかを具体的に述べる
このようにしっかりとストーリー立てることで転職の必要性や合理性が相手に伝わりやすくなります。
例えば、以下のような伝え方をしてみましょう。
「自分の中で顧客への提案力をさらに向上させたいという強い意欲があるため転職を決意しました(④)。
前職では営業職として多くの顧客と接し、売上目標を達成してきました(①)。しかしながら、現職では提案内容やプロセスが既に確立されており、個人としての創意工夫やアイディアを自由に発揮する機会が限られていました(②)。
そこで、より裁量があり、自分のアイディアや提案を積極的に実践できる環境に身を置きたいと思うようになりました(③)。
御社のHPを拝見し、開かれたコミュニケーションや新たな挑戦を重視されている社風から、自分の顧客への提案力をさらに向上させて売り上げに貢献できるような環境が整っているのではと思い(④)、御社を志望しました」
具体的なエピソードで経験や考え方を鮮明に描写する
転職理由を伝える際には具体的なエピソードを交えると説得力が格段に高まります。
エピソードを盛り込むことで、自分の経験や考え方をより鮮明に描写でき、面接官に対して具体的で実感を伴う印象を与えることができます。
- 売り上げが〇〇%増加しました
- 〇〇件契約を獲得することができました
- クレームを月に〇〇件減少させることができました
例えば以下のような伝え方をしてみましょう。
「私が転職を決めた理由は、自ら新しい方法を模索して挑戦できる環境で仕事をしたいと思ったからです。
現職のプロジェクトで新規開拓営業を担当しましたが、市場が飽和状態で、従来の方法では新たな顧客の獲得が難しい状況に直面しました。
その課題を解決するため、自発的に新しいマーケティング手法を学び、SNSやウェブマーケティングを取り入れて1ヶ月でSNSのフォロワーを30%増やし、SNSからの流入件数を大きく増やすことができました。
この経験を通じて、自ら積極的に新しい方法を模索して実践することの楽しさと難しさを知り、これからも積極的に挑戦できる環境に身を置きたいと強く感じ、転職を決意しました」
志望動機や自己PRとの一貫性を持たせる
加えて、転職理由は志望動機や自己PRと一貫性を持たせることも非常に重要です。
これは、応募者の転職に対する姿勢や目的が明確であることを示し、採用担当者が納得しやすくなるからです。
転職理由、志望動機、自己PRが一貫したストーリーでつながっていると、応募者のキャリアに対する真剣さや計画性が伝わります。
「御社の製品開発における先進的な取り組みに共感し、自分もそうした環境で働きたいと思った」と述べる場合、転職理由においても「前職では製品開発に携わる機会が少なかったため、自分の強みを最大限に発揮できる環境を求めている」と説明します。
さらに、自己PRでは「自ら積極的にアイディアを出し、新しい試みに挑戦することを得意としている」ということを述べるようにしましょう。
こうすることで一貫して「新しい試みに挑戦する積極的な姿勢を持っている」という姿勢を面接官に強く印象付けることができます。
将来的なビジョンを伝える
また、転職理由を述べる際は、将来的なビジョンを伝えることも効果的です。
転職後に目指すキャリアビジョンを明確に伝えることで、採用担当者に自身のキャリア計画や成長意欲をアピールできます。
「将来的にはリーダーとしてチームを率いる役割を担いたいと考えています。そのためにも御社で専門性をさらに高め、マネジメントスキルを身につけたいと思っています」
このように具体的な目標を伝えることが有効です。
このように具体的なビジョンを明確に伝えておくと採用側も採用した後にどんな役職に就くか、どんな活躍をしてくれるのかが具体的に想像しやすくなります。
上記のように転職理由を好印象に伝えるためには、ポジティブな表現で意欲や目的を明確に示し、具体的なエピソードやストーリー性を持たせ、一貫性を保ちながら将来的なビジョンを伝えることが大切です。

これらを意識して、面接官に対して説得力がある好印象な転職理由を伝えていきましょう!
ネガティブな退職理由を前向き変換するケース別の転職理由と模範解答例
キャリアアップを目指す場合の転職も未経験業種や職種への転職も、「これまでの経験を活かしつつ、新たな分野にチャレンジして視野を広げたい」ということを伝えると好印象です。
そこで以下に3つの具体的な退職理由を挙げながら、ネガティブな退職理由を言い換える場合の例文とポイントをいくつか記述します。
- パワハラが原因で退職した場合
- 長時間労働が原因で退職した場合
- 給料が低いことで退職した場合
パワハラが原因の場合
パワハラが原因の場合はこのように変換できます。
パワハラがある(ー)
→相談できず一人で抱え込んだ(ー)
→次は仲間と協力してより大きな成果を出したい(+)
転職を決意した理由は、チームで協力しながらより大きな成果を上げるような仕事がしたいと考えたからです。
前職では業務量や責任が非常に大きく、周囲と協力して進めるというよりも、一人で抱え込むことが多い環境でした。周囲に相談や協力を仰ぐことが難しく、自分自身も、なかなかうまく周囲をサポートできずにいました。
そのような環境で働くうちに、自分の成長ややりがいを感じづらくなり、このままでは長期的に健全なキャリアを築けないと判断しました。
今後は、チームで協力しながら前向きに挑戦できる環境で、より主体的に貢献したいと考え、転職を決意しました。
🔍【言い換えのポイント】
ポイント | 説明 |
---|---|
直接的に「パワハラ」と言わない | 面接官に「この人はまた不満を言うのでは?」と思われるリスクがあるため、あくまで事実をやんわりと。 |
環境や働き方にフォーカス | 「上司が理不尽だった」と言うのではなく、「業務環境が過度だった」「協働が難しかった」など客観的に。 |
自分の意欲を示す | 「こんな環境は嫌だった」ではなく、「より良い環境で成長したい」という前向きな姿勢をアピール。 |
責任を他人に押し付けない | 自分も学んだ・気づいたというニュアンスを出すことで、成長意欲が伝わる。 |
長時間労働が原因の場合
長時間労働の場合は以下のように言い換えることができます
長時間労働を強いられる(ー)
→私生活とのバランスが取れずに仕事の質が下がる(ー)
→ワークライフバランスを整えて質のよい働き方をしたい(+)
前職を退職した理由は、継続的に自分の能力を高めながら、チームとしての生産性に貢献するような働き方がしたいと思ったからです。
前職ではプロジェクトの特性上、深夜や休日に及ぶ業務が慢性的に続く状況でした。自分としては与えられた業務に責任を持って取り組んでおりましたが、長期的に質の高い成果を出し続けるためには、より健全なワークライフバランスと効率的な働き方が必要だと感じました。
今後は、自身の能力を継続的に高めながら、チームとしての生産性にも貢献できる職場で働きたいと考え、転職を決意しました。
🔍【言い換えのポイント】
ポイント | 説明 |
---|---|
「不満」ではなく「気づき」にする | 「長時間労働がつらかった」ではなく「効率的な働き方の重要性に気づいた」とポジティブに変換。 |
自分の成長や価値観を絡める | 「成長を持続させるには、働く環境も重要」という視点にすることで、戦略的な印象を与えらる。 |
業務に責任を持っていたことを伝える | 「逃げた」のではなく「改善を考えた結果の転職」だと伝えることで、信頼感が生まれる。 |
次にどうしたいかを明確にする | 「だからこそ、〇〇を重視する職場で働きたい」という将来像を語ると好印象。 |
給料が低いことが原因の理由
給料が低い場合は以下のように考えましょう。
給料が低く上がらない(ー)
→成果を上げても評価されない(ー)
→評価される環境でより成長して貢献していきたい(+)
前職を退職した理由は、努力や成果を評価していただける環境でより一層成長していきたいと感じたからです。
前職では、やりがいのある仕事を任せていただいており、スキルアップにも繋がる経験ができたと感じています。ただ、給与面については会社全体の制度上、成果や成長が十分に評価される仕組みではなく、長期的なキャリア設計を考えた際に、将来に不安を感じるようになりました。
今後は、努力や成果を適切に評価していただける環境で、より一層成長しながら貢献していきたいと考え、転職を決意しました。
🔍【言い換えのポイント】
ポイント | 解説 |
---|---|
単なる不満ではなく「キャリア設計の一部」として表現 | 「給与が低いから辞めた」ではなく、「長期的なキャリアを見据えて」と言うことで合理性を持たせる。 |
「成果が評価されない」→「成長が報われる環境へ」 | 評価制度に焦点を当てることで、前向きな姿勢を伝えられる。 |
現在までの仕事への感謝・やりがいを伝える | 「感謝+不安+前向きな意欲」の流れを作るとバランスが良い。 |
お金の話を“目的”にしない | 「収入を上げたいから」ではなく「価値に見合う評価を受けたい」と言うだけで印象が大きく変わる。 |
まとめ:自信を持って転職活動に挑むために
面接で質問にうまく対応するためには、事前にしっかりと準備しておくことが不可欠です!
また、面接中に転職理由が上手く伝えられなかった場合には、「先ほどの説明が不十分でしたので、改めて説明させてください」と丁寧にフォローすることも有効です。
面接終了後には、メールなどを通じて面接官に改めて熱意を伝えるフォローアップも効果的です!
転職理由を伝える前に、内容がポジティブであるか、一貫性があるかをチェックリストで確認しておくことで、面接当日の自信にもつながります。
転職理由を明確に伝えるための準備をしっかりと行い、自信を持って面接に臨んでください。



みなさんがキャリアを前向きに築いていくことができるよう、心から応援しています
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