「自分の考えがうまく伝わらない」
「会議で言いたいことがまとまらない」
「なぜか部下に指示が伝わらない」
こうした悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか?

その原因の多くは、実は“言語化力”の不足にあります。
現代のビジネスは、情報のやり取りと意思疎通の連続です。社内外の関係者と協力しながら物事を進めていくには、自分の考えや状況を正確に伝える力が不可欠な職種も多いはず。
つまり、言語化力こそがビジネスの「土台」であり、「円滑な仕事」「信頼される人間関係」「成果を上げるプロセス」のすべてに深く関係しています。
そこでこの記事では以下のことをまとめました。
- そもそも言語化とはなんなのか。なぜ大切なのか
- ビジネスで言語化が必要な理由
- 言語化を高めるための5ステップ
言語化とは何か?思考を整理し、人間関係をつなぐ力
言語化とは、感情・思考・状況など、頭の中にある抽象的なものを「具体的な言葉」に変換する行為です。
もし言語化できないとどうなるのでしょうか?
言語化できていないということは、現状・事象を理解できていないとも言い換えられます。ということは次に起こすべきアクションや今必要なことがわからない状態になってしまうのです。
以下はすべて、「言語化できていないToDoリスト」の例だ。
・ユーザーの反応を見る
・お客さんの行動を観察する
・マーケットリサーチをする
・先輩に話を聞く
・見込み客に声を掛けるこれらはすべて、「行動につながらない表現」だという。
「仕事ができるリーダー」の共通点、「言語化する力」が侮れない納得の理由 | 注目の1冊 | ダイヤモンド・オンライン
https://diamond.jp/articles/-/327728
たとえば、「なんとなくモヤモヤする」という感覚も、「相手の態度に違和感を覚え、不安になっている」と言語化することで、他者にも状況が伝わり、コミュニケーションが可能になります。
ビジネスシーンにおいては、
「何を考えているか」
「なぜそう判断したか」
「何をしてほしいか」
といったいわゆる詳細の部分を相手に明確に伝える必要があります。
もし言語化ができていないと、意思疎通の齟齬、業務の遅延、信頼関係の崩壊といった問題が発生します。
では逆に言語化ができるようになると、どんな効果を見込むことができるか。以下のような効果が得られることが予想できます。
- 上司への報告や提案が的確になる
→実現したい内容が齟齬なく伝わり自分のしたいことができるようになる - 部下や同僚への指示が明解になる
→こんなことを頼んだわけじゃない!とならず自分が欲しかった成果を出してもらえるようになる - 自分の思考がクリアになり、判断が速くなる
→なんとなくではなく、根拠をもとに素早く最適解を選ぶことができるようになる - 会議や面談での発言に説得力が増す
→この人の言うことなら!という信頼を積み重ねることができる - 問題の本質を把握しやすくなる
→”なんとなく”が減り重要なことをしっかりと理解できるようになる
なぜビジネスで言語化力が問われるのか
生活や友人とのコミュニケーションなど、様々な場面でメリットをもたらしてくれる言語化ですが、ビジネスにおける利点をもう少し深掘りしていきます。
チーム内の誤解を防ぐことができる
例えばスピード感を伝える「早めにお願いします」という指示について。
“早め”の感覚はその人のそれまでの経験に依存します。
仮に締め切りが⚪︎日と共有されていても早めの基準は人それぞれです。
- 締め切り当日の朝であれば修正する余裕もあるため朝に提出
- 当日にならないように余裕を持って締め切りの前日に提出
- 修正で返ってきても対応できるよう3日前くらいには提出
そのタスクの締め切りや重要度・スケジュール感によって”早め”の感覚はかなり幅があります。
つまり、これを明確にしない限り、自分の思っている”早め”に結果が返ってこないのは当たり前です!
言語化力あれば、
「△△という理由があるからしめきりは◻︎日だけど、⚪︎日までに一旦自分にれビューをしてしてほしい」
と具体的かつ正確に伝えることができます。
上司や顧客への報告・提案が通る
判断材料として求められるのは、事実・背景・考察・提案をきちんと整理した説明です。
例えば映画の感想なんかでもそうです。
- 「めっちゃ面白かった!」
- 「主人公の表情が切り替わっていく中で、どんどん強い瞳になっていってさ。自分も人のこういう場面で感動したことがあったしめっちゃ心に響いた〜!絶対〇〇やったら楽しめると思うしぜひ見てみて!」
どちらの方が興味が惹かれやすいですか?
後者の方が、じゃあ見てみようかなとなる人が多いはず。仕事においてもそうです。
何かを提案し、通そうと思った時には具体的な利益や根拠となるデータが必要となります。
そうした具体的な説明を聞き納得する理由があるから、利益がイメージでき、提案が通るわけです。
人間関係も重要な要素となるため以下の記事もご確認ください!
問題解決のスピードが上がる
何が問題なのかを正確に言語化できれば、対策も明確になります。
「なんとなく最近顧客の反応が悪い」ではなにも解決しませんよね。そこで原因を考え言語化できるとどうでしょうか?
「顧客の反応が下がっているのは、問い合わせ対応の遅れが原因だ。
問い合わせ件数が徐々に増えていたが変化が緩やかだったので大きな問題にはなっていなかった。
しかしここ数ヶ月で問い合わせ件数は150%まで増えているのに人員は増やされていない。」
と特定できれば、「では人員を増やそう!」と次の打ち手が生まれます。
なんとなく。
〇〇な気がする。
普段の自分の生活ではこういう曖昧さを残す解釈は時に自分の心を助けてくれます。
しっかりと事象と向き合って言葉にして解決策を見出すことで、次のアクションが明確になり問題解決を一気に早めてくれるのです。
自分自身の思考整理にも役立つ
人は言葉にして初めて、自分が何を考えているかを明確に自覚できます。
特に漠然とした不安や悩みは日々生活をしていく上で大敵です。
・最近全部がうまくいかない
・なぜかずっと切羽詰まっている
誰でも一度はこんな感情を持ったことがあるはず。



でも、本当にすべてがうまくいっていないなんて状態は、ほぼありません。
ではどうすれば良いのか。
曖昧な不安や悩みを言語化していくことで勝手に状態が分析されていくのです。
「これは人間関係の問題だ」
→〇〇さんにもっと積極的に話を聞いてみよう
「これはタスク管理の問題だ」
→簡単なタスクから始められるようにタスクを分けてみよう
「これは制度の問題だ」
→変えられない部分もあるからその中でどう効率化すれば良いか考えよう
という要領で不安や悩みの原因を言語化することで細分化され、思考の可視化と整理が進みます。
ビジネスで使える言語化力を高める5つのステップ
ここからは具体的にどんなことを意識して言語化をしたら良いのか記述していきます!


ステップ1:主観と客観を分けてみる
まずは「自分がどう感じたか(主観)」と「事実として何が起こっているか(客観)」を分けて言葉にする訓練をしましょう。
たとえば「部下の態度が悪い」と感じたとします。具体的に主観と客観を分けるとこのように分類できるのではないでしょうか?
- 挨拶が返ってこなかったので悲しかった
- 機嫌が悪いのではないかと感じて不安になった
- 何かあったのかと心配になった
- 挨拶がなかった
- 声のトーンがいつもよりも低かった
- 相槌がいつもより少なかった
このように事象と感じたことをまずは分けてみましょう。
そうすることで「なぜ?」「これからどうすればいい?」と原因を探ることに加えて、”態度が悪い”という曖昧な事象が具体的な行動や感情に変換されていきます。
こうすればもし仮に指摘するとしても
「態度が悪い!」という曖昧で理不尽なものではなく、
「挨拶はしっかりしよう」という根拠を持った説得力のある指摘に変更することができます。
ステップ2:5W1Hで構造的に話す
報告や相談をするときは、Who・What・When・Where・Why・Howのフレームを意識すると、論理的な説明が可能になります。
これができていない場合、思いついたもの・ことをただそのまま放出するため、受け取り手が話の内容を理解することが難しくなります。
例えば人に指示を出すときはこんな要領で5W1Hに当てはめてみましょう。
who:同じチームの後輩
what:企画の資料作り
When:明日から着手して1週間
Where:出来次第連携チームで共有
Why:企画書を共有することで他のチームが動ける・方針を立てられるようになるため
How:前回の会議の結論と、企画書のテンプレートを使用する
いざ整理するとどれも必要な情報です。しかし言語化ができていない状態ではどれかの情報が簡単に抜け落ちてしまいます。
1つの要素が抜け落ちることで、質問や疑問が生まれ余計なコミュニケーションコストが生じてしまいます。



余計な手間や不安・イライラをなくすためにも、5W1Hをしっかりと意識しましょう!
曖昧な言い回しではなく、構造的に伝える練習を重ねましょう。
ステップ3:日常のモヤモヤをノートに書き出す
普段の業務や人間関係で感じた「なんとなく不快」「違和感がある」といった感覚を、ノートに書き出す習慣を持ちましょう。
誰かからの評価を待つのではなく、自分で自分にフィードバックを与えるという行為。これは、外部の評価に依存せず、自らの軸で成長を続けていくために非常に効果的な手段です。
セルフフィードバックで自己成長を加速する方法-習慣化のコツと実践ステップ | Life Shift Coaching
https://life-shift.high-value.co.jp/self-feedback/
例えば「明日の仕事に行きたくない」という場合。一例ですが以下のようなセルフフィードバックが可能になります。
行きたくない
→なぜ:怒られるかもしれないから
→怒られる原因は?:締め切りが近い資料の進捗よくない
→どういう現状?:やり方がわからず手もつけられていない
→何がわからない?:そもそもどういう形式で作ればいいのかわからない
→じゃあどうすればいい?:形式を聞く。進捗が遅いことをひとまず報告しておく
このように具体的な行動まで書き終わる時には大部分のモヤモヤは消えていることがほとんどです。
怒られるかもしれない不安が消えるわけではないですが、
・次にすべきことがわかっている
・何をすれば良いのかわからない
この2つでは雲泥の差があります!
漠然としたモヤモヤを書き出すことで頭の中から外に排出してあげるとともに、具体的な行動指針まで立てることができれば、不安感やイライラは大幅に軽減されます。
ノートに書き出すのにおすすめの時間帯は夜です!
就寝の1時間前くらいに時間をかけてこの作業を行うことで睡眠の効果を高めることができます!
以下の記事も併せてご確認ください!
ステップ4:話す前に3秒考える
即答する癖がある人は、一度「これから何をどう伝えるか」を頭の中で3秒だけ整理しましょう。
これだけで驚くほど伝わり方が変わります。
コミュニケーションやビジネスの場面において、本当の即答が求められる場面は少ないです。
対面のテンポの速いコミュニケーションにおいては3秒程度の隙間は特に大きな違和感にはなりません。どうしても間が怖いという人は「あ〜そうですねぇ」「えーっと」などの言葉で間を繋いでも良いんです。
これを知らずに焦って反射的に言葉を返すから、何を言っているのか伝わりづらい整理できていない情報が自分の口から発せられることになります。
言語化は反射ではなく選択です。
慣れていないうちは待たせることが少し怖いかもしれません。でも、自分の言葉を変えたければ一度一呼吸して3秒立ち止まってから言葉を発するようにしましょう。



少しの勇気でコミュニケーションの質を大幅に変えることができます!
ステップ5:第三者の視点を取り入れる
自分が「伝えたつもり」になっていないかをチェックするために、信頼できる上司や同僚に「今の説明、伝わってた?」と確認してみましょう。
実際にセルフフィードバックとして自分が話したことを録音しておくのも良いと思います!



私は教員時代授業を録画・録音して自分の説明を振り返っていました!
こうして話し手としての自分だけでなく、第三者の視点を得ることで、言語化の精度が上がります。
その現実に向き合わずして「なんで伝わらないの?」「この前言ったよね?」など、伝わらないことで相手を責めるのは良好なコミュニケーションとは言えません。
まずは自分が話し手として技術を上げられるよう第三者の視点をしっかりと持つようにしましょう。
まとめ:言語化は“仕事力”そのもの
ビジネスにおいては、思考の整理・意思疎通・問題解決・信頼構築など、あらゆるシーンに関わる“根幹の力”です。
「仕事がうまくいかない」
「伝わらない」
「モヤモヤする」
そう感じたら、それは言語化の不足が原因かもしれません。
この紹介した5つのステップを、日常の中で少しずつ意識することで、確実に言語化力は高まります。



今日から、頭の中の「なんとなく」を、具体的な「言葉」に変える習慣を始めてみてはいかがでしょうか!
コメント